しかしながらそんな雑踏喧騒の昼間を抜け、夕日が沈むころになると徐々に涼しくなり心地良いゆったりとした風も吹いてきます。空と大地が夕暮れ色に染まって街の中央にある広場に市井の人々が三々五々集まりだし、「今日は何かおもしろいことあるかな」という顔して散策している時刻。各屋台が軒を並べ、羊肉を焼く匂いとそれに乗ってやってくるクミンの脳幹を刺激するいい香りがしてくるような夕刻の風景、いいですねえ、好きでしたねえ。その一場面一場面が一刻一刻が脳裏焼き付けられてしまうほど時の流れに力強さがあるんですね。
その広場の片隅に、裾のほつれた7分ズボンをはいて、棒切れを傍らに備え売り物の番をしている少し頭の弱いおじさんがいました。毎回定時になると2~3人のガキどもにからかわれるのですが、おじさんは待ち構えていたように、棒を頭上にかざしながら「このくそガキィ待てー!」と夕日に向かって追っかけてゆくんですね。なんというノスタルジックな夕暮れ時なんでしょう、たまりませんでした。おじさんのサンダルの片方の鼻緒が壊れているだけにどうしたってガキには追いつけないのです。ガキどももそのことは重々承知で毎回からかいに来るのです。広場に集まっている人たちの「またやってる」という感じで笑ってるどの顔にも夕日があたってそれはそれはタルコフスキー的なカットの長~いシーンとなって脳裏に刻まれてしまうのでした。米国人権委員会の人が見てたらすぐ派遣団を送ってくるでしょうね、「その人権抑圧をやめれ!」と。
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