Friday, March 22, 2013

要約 その1 「イギリス会社法発展史論」 武市春男



著者 武市春男
イギリス会社法発展史論
城西経済学会誌 11(1/2/3), 1-31, 1975-11

偉大な先人の研究論文を要約し、イギリス会社法及び東南アジア会社法理解の一助とする。



1 会社法は、その歴史的背景を知らないと理解しにくい。
2 3つの時代区分を考える。
  ①バブル法が可決された1720年以前の時代
  ②1720年から1825年バブル法が廃止されるまでの時代
  ③1825年から現代
3 中世から「会社」という名で活動していたが、仲間組合のようなもので、法人格は付与されず、有限責任の原則も確立されていなかった。

4 法人格は国王の特許(charter)によって与えられる。ギルドは当初国王の特許を得ることができず、法人格をもたない組合を通じて取引をおこなった。

5この組合を通じて取引には2つの形があった。
  ①commenda  金融業者が一定の金額を企業家に前渡する。その代り、利潤の分け前を請求できる。前渡した金額以上の責任をもたない。
  ②societas  組合員は相互に他の組合員の代理人である。また、組合の負債は資産の限り責任を負う。現在までに及ぶ組合における相互代理と無限責任の認識を当時から有していた。

6 16世紀イギリスの植民地政策の展開に伴って、ギルド制度の原理を拡張したRegulated company)が活躍した。当初、自己の資本をもって独自の計算にて企業を営んでいたが、後に、共同計算(joint account)共同資本(joint stock)によって経営を展開するようになる。この形態をとったのが、東インド会社(The East India Company)である。「この新しい型の会社は共同資本会社(joint stock company)と呼ばれた。

7 「共同資本会社は、成員のすべての者が出資したその資本を結合させて一つのものとして、それが単一人として企業を経営することであって、このような共同資本が、会社という外枠と癒合して一体と成るところに共同資本会社という形態がうまれるのである。」

8 東インド会社の設立に引き続いて、植民を目的とする会社が多数設立されるのだが、それらは、法人格がある、つまりは、国王の特許状を得て設立された会社ばかりではなく、困難な特許状取得を断念した法人格のない会社が少なくなかった。その後、法人格をもった会社が独占的なに貿易を支配するということは時代に合わず、また、自由貿易にとって不利益であるとの認識が広まり、衰退していくとともに、それまで法人格のなかった会社が大きく進展するが、ローマ法ではしごく当然とされた人的結合集団に人格を与えるという考え方は、イギリスではこの時期、存在はしたが発展しなかった。

9  しかしながら、法人格が与えられようとなかろうと、経済上、国策上の理由により、法人格のない会社は増加の一途をたどる。そして、ついに、南海会社の設立一大契機として空前の起業ブーム・投資ブームが起こり、やがてバブル(bubble)とようばれる状況が起こるのである。

10 「これに便乗するかたちで当時設立が許可制だった株式会社も また無許可で作られた。いわゆるヤミ会社の株価も一気に跳ね上がった。そのほとんどは真剣に事業を興そうとする起業家たちであり、その業容もロンドンへの 石炭供給事業や石けん製造技術の改良事業など、前産業革命期イギリス産業の発展の度合いを垣間見ることができるものであった。とはいえ、こういった真面目 な事業の投資募集ばかりでなかったことも確かである。」「詐欺的な投機の募集も確かにあった。例えば、永久に回り続ける車輪(永久機関)を作る会社、『誰もそれが何であるかわからないが、とにかく莫大な富を生み出す企業を運営する会社などである。なお、その莫大な富を生み出すという会社の募集主は2000ポンドを集め、その夜のうちに金袋と共に姿をくらましたという。」以上ウィキペディア「南海泡沫事件」


11 経済を混乱に陥れるようなバブル経済に対して、バブル法(Bubble Act.1720)が制定され、1825年に廃止される。一連の事件により、共同事業に対して抱く人々の不安は、やがて、この方面の法の整備が必要であることを認識させるのだが、イギリス判例法はいまだ、別個の法人格を認める方向にはなかったのである。

12  1825年にバブル法が廃止されてから会社の形態の主なものは次の3つである。
    ①国王の特許状にて法人格を与えられた会社(companies incorporated by Royal Charter )
    ②国会の特別制定法によって法人格を与えられた会社(companies incorporated by       Special Act of Parliament)
    ③会社契約によって設立された会社(deed of settlement companies)

13 1844年会社法 (Joint Stock Companies Act<7&8 Vict,c,110> この法律では、大人数による法人格のない会社の設立を禁止、登記によって共同出資会社の設立を許可し、法人格も認めた。しかし、社員の責任は無限責任であった。

14 1844年会社法は、画期的な法律であったが、有限責任を認めていない点に非難があつまり、、約10年後の1855年有限責任法(Limited Liability Act, 1855)が制定され、次のような条件の下、有限責任が保証されたのである。
    ①会社は、すくなくとも25名の社員を集め、その社員が少なくとも公称資本の4分の3以上を保有し、かつ、各社員は少なくとも払込資本の20パーセントを所有すること。
    ②「有限責任」(Limited)を商号に入れる。
    ③監査役が、通商産業省の承認を得たものである。

15 1862年会社法(Companies Act, 1856) 会社に法人格を付与し同時に社員に有限責任を認めたものであり、イギリスの現代会社法の基礎とイギリス経済の発展は、本法によってもたらされたものといってもよい。 この法律には、First Schedule Table A 附属明細表第一表A号に、会社業務規程(regulation for management)を掲げ、普通定款の模範的ひな型(articles of association)を提供している。

















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